2015.06.10 Wednesday
ライク・ア・ローリング・ストーン
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どうにも心が晴れなくて、ここ数週間は鬱々としていた。

自分がやっていることが果たして意味があるのかどうか、何の意味があるのか。やったことの成果は出ているのか、それを正しく認識してもらえているのか。心ない人間に自分の心を蝕まれていないか。自分の凶器のような言葉で人を追い詰めるのは果たして意味があるのか。

ストレスが極限にきているのは自分でも感じていた。自分の中で正しいことをしていたはずなのに、いつの間にか自分の心がそれを正しいのかどうか迷い始めている。仲間だと思っていた人に後ろから刺されるようなことをされて心が傷ついて化膿し、どんどんと膿がたまっていく。心が腐っていく臭いがするのよ。

何のためにやってきたのか、自分を疑い始めたらもう終わりなんだと、そういうことに気づいてはいたけど、自分を疑い始めたら終わりがないっていうのをしばらく忘れていたわけで。

他人から見れば、うまくいってるかもしれない。でも内情は火の車。普通にアルバイトしてるほうが気楽でいいくらいに逼迫している。でも、どうしてそれを続けていくかといえば、それは、もう、僕の人生が自分では決められない運命みたいな領域に入っているからで。そういうことを受け入れないと、定められた役割に抗ったところで、また引き戻されるだけ。

9年前にパリで売るんだと心に決めた女王製菓も、去年にはル・ボン・マルシェで販売したし、今年はヴェルサイユ宮殿公認コラボという夢を果たした。いろんなメディアが取り上げてくれたし、取材の依頼は今もある。ただ、10年前からずっと心の中で影を落としている、岡山のメディアに取り上げられたい、という思いは遂げられなかった。

僕は心を入れ替えて商工会議所の記者クラブにプレスリリースの投げ込みに行った。もう2日経ったが連絡はない。性急なのかもしれないけど、ヴェルサイユ宮殿とのコラボなんて、岡山にいる連中ではほぼ不可能なレベルだ。僕はそれを遂げたという自信を持っていた。でも、おそらく岡山の新聞にこのことが載ることは無いのだろう。

東京で売れ、パリで売れ、ヴェルサイユ宮殿とコラボレーションしても、岡山の新聞に載れない。僕のやってきたことは、岡山ではチンカスみたいなもんだったんだな。僕はずっと岡山のメディアを恨んでした。でも、それは間違いだったと気づいた。僕が目指すところを間違っていたんだ。

晩飯を食い終わって、僕はワイフに言った。

「もう、全部やめよう」

家も売って、会社もたたんで、始めかけている新しい事業を二人で細々と始めよう。ここまでやっても、ヴェルサイユ宮殿とコラボレーションしても、きびだんごの新商品のニュースに勝てない。僕の努力はこの地ではあまりにも無意味で無価値だった。音を立てて心が崩れていく。岡山の人たちは俺が死ねば満足するのかな。いっそ死んでやろうかと思った。もう、心が保てない。

岡山の会社をたたもうと、ワイフと話をしに近所のカフェに行った。

もうやめたい、心が折れてしまった。

カウンターにいた流しのCD屋さんが帰るのをつかまえて話を聞いてもらった。心を許せる数少ない人。取り留めもないことを話したり、悩んだりしていることを話したり、深夜にずいぶんと引き止めてしまった。折れていた心が少しずつ張りを取り戻していく。

流しのCD屋さんが最後に言った。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」

そう、僕は岡山では落ちるところまで落ちた。でも、同時に世界に一番近い入り口にたどり着いた。岡山で心も財布もボロボロになって、もう立ち上がれないところまで追い詰められても、東京の仲間や取引先や世界の仲間が助けてくれる。

最後の力を振り絞って立ち上がるんだ。

もう、岡山の人たちに期待はしない。理解してもらおうなんて甘い期待は持ってはいけない。僕はもう、ここの人ではないんだ。望まれる場所で、望まれるレベルの仕事をしよう。岡山で地の底まで落ちたなら、次には世界が待っている。それを知っているのは僕しかいない。



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